1. 居合道正史 〜隠された真実〜
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【2】隠された真実 錠八政之丞 土佐神伝流秘書作者
錠八政之丞
土佐藩士『錠八政之丞(じょうはちまさのじょう)』という人物はおそらく初めて聞
くのではないだろうか。実はこの人物こそ、初伝業を大森流と歪曲し傍系
派二代目として系譜を捏造した張本人、土佐の貧乏侍であり、後に『山川久蔵幸雄・雅』と名乗った人物である。
現代なら「希代の詐欺師」とも言えるこの人物は、長く土佐傍系派と財団・全日本剣道連盟の上
層部でその実像が隠蔽され続けて来た。
正傳派の流祖書簡のみならず数多ある傍系派書簡においても全く見出せなかった理由が今ここに
解き明かされる。歴史の真っ直中に没入して行く喜びと期待に
心踊るのであるが、自尊史観に埋没していた諸氏にとっては怒りと自虐心に囚われるかも知れない。心して読んでいただきたい。
土佐抜刀宗家林一族で十四代宗家林弥大夫政敬の弟子であった『錠八政之丞』は、文政年間
1818年頃、林家に入門し居合数手を習っている間に窃盗が露見
して破門となっている。このとき盗み出したのが居合伝書の何割かであり、これを改竄し「土佐神伝流秘書」として文政二年に発表している。この文書ではさら
に九代宗家林六太夫守政の父「林五左衛門政良」が伊勢流を元に考案した初伝十一本を、「大森六郎左衛門」考案と捏造したのが、「大森流」(林が二人で大
森?)であり、この文書を著すや錠八は『山川久蔵幸雄』と改名、その後「雄」を「雅」に代えてここに「山川久蔵幸雅」が登場するのである。
錠八(山川)は十四代宗家林弥大夫政敬の内弟子
生駒道之丞脩正(後の江戸上屋敷師範)、松本平兵衛誼正らからの「免許皆伝を渡す」との誘い(実は「謀殺」の誘き
出し)に恐れをなし江戸へ逃亡している。この事実を当時の中山博道は知るよしも無かっただろう。
傍系派出身の十七代大江宗家は正傳を受継ぐと同時に正傳業を正しく理解し、そのうえで傍系
業潰しの改革を断行。土佐傍系派は大江宗家の改革に従うと一手
何円の指導料収入を失い糊口の渇きになってしまう状況となっていた。大江宗家に疎外された中山博道は大江宗家の改革に抵抗する勢力の懐へ飛び込んだが、
(素
行の良くない中山は土佐傍系剣士のなかでもタライ回しにされたという。)その結果として偽流たる大森流なるものが全国に氾濫することとなった。居合道には
刀剣販売
という大きな余禄があり、これも傍系居合が大江宗家の改革に従わなかった理由の1つである。
傍系派は昭和三十九年に二十代河野百錬宗家が設立した全日本居合道連盟に参加したもののすぐ
反旗を翻して脱退、全日本剣道連盟の居合道部に喜んで参加
し、似非「神伝流」の提灯持ちに成り下がった。その余禄こそが居合道書簡の出版費用援助であり、前節に言う雑誌特集と出版物を以て感動と興奮を日本国内に
もたらした。これらは金儲け目的の「偽傳による歴史捏造」と「感動・自尊史観」の抱合せ商法・偽計工作というようなものであった。
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